参加登録 研究会の会則 掲示板 お問合わせ

・ 小児ネフローゼ症候群治療研究(柴苓湯)   第1期〜第3期および第3期追跡調査

第1期スタディ
  長期ステロイド剤治療下(18週間)のネフローゼ症候群初発例に対する柴苓湯の再発防止効果の検討
   発症時1-15歳で微小変化型ネフローゼ症候群と考えられた158例について柴苓湯群(プレドニゾロン+柴苓湯)と対照群(プレドニゾロンのみ)に分け、再発率、頻回再発率について比較検討した。
 ステロイド抵抗性を除外した解析対象症例133例(柴苓湯64例、対照群69例)中、再発率は、柴苓湯群48%、対照群58%、頻回再発率は柴苓湯26%、対照群36%で、柴苓湯群の頻回再発率が対照群に比較し低い傾向を示した。柴苓湯は小児期ステロイド感受性ネフローゼ症候群の再発防止、ステロイド使用量の削減に有用な薬剤であると考えられた。
第2期スタディ
  柴苓湯併用下での、ネフローゼ症候群発症時のステロイド剤投与法の検討
長期投与法(18週)と国際法(8週)の比較
   微小変化型ネフローゼ症候群が疑われる221症例について、プレドニゾロン長期投与群(18週)と短期投与群(8週)に分け、柴苓湯併用時の初期ステロイド治療期間がその後の再発、頻回再発に及ぼす影響について検討した。その結果、再発、頻回再発ともに、両群間に差は認められず、小児ネフローゼ症候群の発症時の治療として国際法にて8週間のプレドニゾロン治療を行い、柴苓湯を併用することが妥当であることが考えられた。
第3期スタディ
  国際法ステロイド剤治療下(8週)のネフローゼ症候群初発例に対する柴苓湯の再発防止効果の検討
   小児ネフローゼ症候群初発例を柴苓湯群(プレドニゾロン+柴苓湯)と対照群(プレドニゾロンのみ)に分け、国際法ステロイド剤治療下における再発率、頻回再発率について比較検討した。再発率、頻回再発率はそれぞれ柴苓湯群(129例)50%、16%、対照群(140例)42%、23%で柴苓湯群で頻回再発率が低い傾向にあった。
第3期追跡調査
  第3期のスタディ終了後の症例について、ネフローゼ症候群再発状況の追跡調査(最長8年間)を行ったところ、柴苓湯群対照群の間に有意な差を認めなかった。
  【論文】
吉川徳茂,伊藤拓,武越靖郎,本田雅敬,粟津緑,飯島一誠,中村肇,清野佳紀,武田修明,服部新三郎,松田一郎
小児ステロイド反応性ネフローゼ症候群、柴苓湯併用症例における初期ステロイド治療の期間と再発−プロスペクティブコントロールスタディ−
日腎誌,1998,40:587〜590
   
                                                                       
                                                                       

・ 全身性エリテマトーデス小児患者を対象としたメチルプレドニゾロン+プレドニゾロン療法と メチルプレドニゾロン+プレドニゾロン+ミゾリビン併用療法の有効性と安全性の多施設共同非盲検ランダム化比較試験(JSRDC04)

 初発SLE患児を対象とし、初期治療におけるプレドニンの使用方法とブレディニンの併用効果について多施設共同非盲検ランダム化比較試験盲験をおこなった(1995-2004)。ステロイドの使用方法は、MPT後連日漸減、隔日維持で統一し、ミゾリピンは、投与群(4〜5mg/kg、250mg max分2投与)30例と非投与群30例にランダムに群別した。1年の短期予後を比較したところ、非投与群で再燃が多い傾向があったが統計的有意差としては出なかった。(ポアソン回帰ハザード比(リスク比)=0.566(95%信頼区間:0.31〜1.07、p値:0.079))。尚、ステロイドの使用方法においては、副作用、再燃割合につき考慮しても初期治療としては適正であると思われた。

【論文】
Tanaka Y, Yoshikawa N, Hattori S, Sasaki S, Ando T, Ikeda M, Honda M.
Combination therapy with steroids and mizoribine in juvenile SLE: a randomized controlled trial.
Pediatr Nephrol, 2010, 25: 877-882




・ 頻回再発型小児ネフローゼ症候群に対するシクロスポリン(サンディミュン)投与法の多施設共同ランダム化比較試験(JSRDC05)

 頻回再発型ネフローゼ症候群に対するサンディミュンの効果と安全性をトラフによる用量調節群(高用量群:トラフ値60〜80ng/ml)と2.5mg/kg/日群(低用量群)の2群に分けて治療期間2年間での検討を行なった。
 登録症例は56例(男/女 : 46/10)、ドロップアウトを除く高用量群24例、低用量群14例で再発回数、無再発率、無頻回再発率および有害事象について比較検討した。
  高用量群で無再発率、無頻回再発率が有意に高かった。一方。有害事象に有意差は認められなかった。
 以上からトラフ値60〜80ng/mlでの2年間の治療は、有効かつ安全であると考えられた。

【論文】
Ishikura K, Ikeda M, Hattori S, Yoshikawa N, Sasaki S, Iijima K, Nakanishi K, Yata N, Honda M.
Effective and safe treatment with cyclosporine in nephrotic children: a prospective, randomized multicenter trial.
Kidney Int, 2008, 73: 1167-1173


                                                                       

・ 6ヵ月以内に再発した小児ネフローゼ症候群初発患者を対象としたプレドニゾロン単独療法と プレドニゾロン+ミゾリビン併用療法の有効性と安全性の多施設共同非盲検ランダム化比較試験(JSRDC06)

 国際法ステロイド治療下のネフローゼ症候群におけるブレディニン再発防止効果等の有効性および安全性に関し、ブレディニン投与例(5mg/kg/日 分2 または分3)と非投与例とをランダムに割り付け比較検討した。発症時1〜10歳の症例の小児期ネフローゼ症候群初発例で、発症6ヵ月以内に再発した症例を対象とした。フレディニン投与例18例、非投与例20例での中間集計結果では、両群に有意差はなかった。両群間に有意差がみられるためには相当数の登録症例が必要との結論が得られ、試験は中止された。この要因の一つには、規定されているミゾリビンの用量5mg/kg/日が守られておらず、3-4mg/kg/日しか使用されていない症例が多く認められたことも考えられた。
 明らかにブレディニンによると考えられる重篤な副作用は認められなかった。




・ 頻回再発型ネフローゼ症候群に対するシクロスポリン療法の効果と安全性に関する試験:ネオーラルの血中トラフ値による投与量調節法の単群試験(JSRDC07)

 小児頻回再発型ネフローゼ症候群患者に対して、シクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤であるネオーラル投与の効果と安全性について検討した。投与方法は、すでにシクロスポリンの旧製剤であるサンディミュンで確立したプロトコールに準じた。(上記小児難治性ネフローゼ症候群(頻回再発型ネフローゼ症候群)に対するCICLOSPORIN(サンディミュン)療法の効果と安全性に関する試験)
 すでに2005年8月31日、登録を終了しており、解析可能な62例(年齢中央値5.4歳、男児48例、女児14例)を解析した。主要評価項目である2年間の寛解維持割合は58.1%(95%信頼区間45.8から70.3)であった。また再発回数はネオーラル投与前後で4.6回/年から0.7回/年に減少した(P<0.0001)。58例に対して投与2年後の腎生検が行われ、5例に軽度のシクロスポリン腎毒性が見られたのみであった。以上から小児頻回再発ネフローゼ症候群患者に対する我々のプロトコールに基づいたネオーラル投与は安全で有効な投与法であると考えられた。

【論文】
Ishikura K, Yoshikawa N, Hattori S, Sasaki S, Iijima K, Nakanishi K, Matsuyama T, Yata N, Ando T, Honda M.
Treatment with microemulsified cyclosporine in children with frequently relapsing nephrotic syndrome.
Nephrol Dial Transplant, 2010, 25: 3956-3962




・ 同試験(JSRDC07)の長期予後調査
 頻回再発型ネフローゼ症候群に対して、ネオーラルの2年間治療に関する効果と安全性については評価できる結果が得られた。しかし、ネオーラル治療終了後においても再発が認められこと。また、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群においてはネオーラル治療後にはステロイドの感受性が回復することや再発が認められることがあり、ネオーラル治療後の治療に関しては、様々な治療が行なわれている。そこで、ネオーラル試験終了後の症例について治療方針を決めて、前方視的試験として実態を把握することで長期治療の予後と勧められる治療法を検討した。現在、結果を集計中である。




・ ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に対するネオーラルおよびステロイドパルス療法の検討: 微少変化群に対するシクロスポリン+プレドニゾロン併用療法とFSGSに対するメチルプレドニゾロン+シクロスポリン+プレドニゾロン併用療法の単群試験(JSRDC08)

 ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に対するネオーラルおよびステロイドパルス療法(MPT)の効果および安全性を検討する。
 2005年8月31日、35例で登録を終了した。
 治療期間12ヶ月、その後12ヶ月は観察期間または推奨治療期間として評価した。1次評価項目は、12ヶ月時の寛解率(完全寛解+不完全寛解)とした。
 35例のうちわけは、微小変化型(MC)またはび慢性メサンギウム増殖(DMP)28例、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)7例。12ヶ月時の寛解率は、MCまたはDMP群 23/28(82.1%)、FSGS群 6/7(85.7%)であった。シクロスポリンによる腎組織障害は1/26(3.8%)に見られたが軽度のものであった。また24ヶ月の時点で1例が末期腎不全に陥った。
 以上から、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を呈するMCまたはDMPに対するネオーラル+プレドニゾロン、FSGSに対するネオーラル+MPT+プレドニゾロン治療は高い寛解率を得られ、また安全であると考えられた。現在、長期フォロー(治療後5年までの経過)を行っている。

【論文】
Hamasaki Y, Yoshikawa N, Hattori S, Sasaki S, Iijima K, Nakanishi K, Matsuyama T, Ishikura K, Yata N, Kaneko T,
Honda M.
Cyclosporine and steroid therapy in children with steroid-resistant nephrotic syndrome.
Pediatr Nephrol, 2009, 24: 2177-2185




・ 小児ネフローゼ症候群初発患者を対象としたミゾリビンの有効性と安全性の多施設共同臨床試験(JSRDC09)

 特発性小児ネフローゼ症候群(NS)は、約90%がステロイド感受性NSである。 わが国では初発時ステロイド感受性NSは、1年間の経過中に20.6%(145人中30人)は頻回再発型NSに至ると報告されている。 頻回再発型NSでは、ステロイド薬の薬物有害反応が発現しやすい。ステロイド感受性NSでは再発を抑制し、頻回再発への移行を回避する治療が望まれる。
 小児難治性腎疾患治療研究会による、免疫抑制薬ミゾリビン(2.5mg/kg1日2回投与)の10歳以下のステロイド感受性小児NSを対象としたランダム化比較試験では、 再発抑制効果と頻回再発抑制効果は認められなかった。
 ミゾリビンの治療効果は最高血中濃度に依存し、小児では成人よりもミゾリビン吸収が悪いと推測され、小児で十分な治療効果を得るためには、 より高用量の1回投与が必要であると考えられる。
 最近、ミゾリビン(5-10 mg/kg/日1日1回投与)の頻回再発型小児NSを対象とした観察試験が行われ、有効性と安全性が報告されている。
 ミゾリビン1日1回投与は成人腎移植の治験で、ミゾリビン6 mg/kg/日は成人慢性関節リウマチを対象としたランダム化比較試験で、有効性と安全性が報告されている。
 以上から本試験では、ステロイド感受性小児NS初発患者を対象に、ミゾリビン6 mg/kg 1日1回投与を行い、ミゾリビン非投与例のヒストリカルデータとの 有効性と安全性の比較試験を行った。




・ 全身性エリテマトーデス小児患者を対象としたミゾリビンの有効性と安全性の多施設共同臨床試験(JSRDC10)

 JSRDC 04 とJSRDC 10では、18歳以下の初発SLE 患児を対象とし、初期治療におけるステロイドとミゾリビン(MZB)の併用効果について検討した。
 JSRDC 04では、MZB投与群(4-5mg/kg 分2)において、非投与群に比し初回再燃までの期間が長い傾向があったが、統計的有意差はでなかった。 MZBの効果は血中濃度に依存する。JSRDC10では、ステロイドの投与方法はJSRDC 04と統一し、MZBを増量(6mg/kg, max 300mg) 且つ分1の投与方法に変更し、 一年間の再燃割合につきJSRDC 04のMZB非投与群を対象としたヒストリカルコントロールスタディーを行う試験計画であった。 目標症例数は30例であったが、登録期間5年間の登録症例数は10例と目標数を達成せずに試験は終了した。 さらに10例中6例が1年間の試験治療終了前に中止しており(治療抵抗性1例、有害事象2例、プロトコール違反3例)比較試験は不可能であると判断された。




HOME